「タイパ」と「コスパ」を超える!飲食店で進化する“食のパーソナライズ”最前線

山添 崇範

物価高や多忙な現代において、消費者は「時間」と「お金」の効率だけでなく、“自分にとっての納得感”を求める時代へとシフトしています。
本コラムでは、外食産業で注目される“パーソナライズ”の最新動向を整理し、なぜ今、飲食店にとってパーソナライズが競争力になるのかを具体事例と共に解説します。

消費者行動の変化 ― タイパとコスパが選ばれる基準に

モノやサービスが溢れる時代、顧客は「時間」「お金」「手間」のバランスを冷静に見極めています。これまでのように「安いだけ」「早いだけ」では選ばれにくく、限られた時間とお金でどれだけ納得できる体験を提供できるかが重要です。

タイパ(タイムパフォーマンス)とは?

タイパとは「限られた時間で、どれだけ満足を得られるか」を表す新しい基準です。
短時間で効率的においしい料理を楽しめる、待ち時間が少ない、といった要素が重視されます。

コスパ(コストパフォーマンス)だけでは選ばれない時代

外食を含む消費行動は、金額以上に“時間をムダにしない工夫”が価値になります。
安くても待ち時間が長い、選択肢が少ないなどの要素は敬遠される傾向にあります。

外食産業への影響

ファストフードやテイクアウトの進化だけでなく、店内飲食にも「すぐ選べる」「スムーズに注文できる」体験が求められています。
DXの波に乗り遅れた店舗との差は今後ますます広がるでしょう。

食品業界で進む“パーソナライズ”の最新動向

多様化する消費者の好みやニーズに対応するため、食品業界ではAIとデータ解析を活用した“パーソナライズ提案”が加速しています。
一律の大量販売だけでなく、一人ひとりに最適化された商品提案は、顧客体験の価値を大きく高める新しいアプローチとして注目されています。

パーソナライズ事例① 伊藤忠商事の味覚データ解析

その代表例が、伊藤忠商事の味覚データ解析サービス です。
味香り戦略研究所と提携し、スマートフォンで誰でも受けられる嗜好性診断を用いて、個々人の味覚を数値化。

12万件以上のデータベースとAI解析を組み合わせ、「その人に合うお菓子」や「相性の良い飲料」など、個別最適なレコメンドを実現しています。これにより、店舗やECサイトにおいて、お客様ごとに異なる“自分専用のおすすめ”を表示する ことが可能となりました。
味覚データに基づくパーソナライズは、商品開発だけでなく、小売現場やオンライン販売の“提案力”強化にも活用されています。

パーソナライズ事例② VITANOTEのパーソナライズサプリ

同じく国内の事例として、VITANOTE(ビタノート) のパーソナライズサプリも代表的です。
利用者は自宅で血液や栄養状態を検査するキットを使い、不足しがちな栄養素をAIが解析。

その結果に基づいて、必要な成分をピンポイントで補える“自分専用サプリメント”が定期便で届けられます。
「自分の体に本当に必要なものだけを選べる」という価値は、サプリメント市場でも差別化の武器となっており、継続率の高さにも繋がっています。

パーソナライズ事例③ Hungryroot(米国)のレシピ提案

海外では、米国の「Hungryroot」 がユニークな取り組みを展開しています。
Hungryrootはオンラインで好みやアレルギー情報を登録すると、AIが冷蔵庫の在庫状況や家族構成、栄養バランスまで考慮し、その人に最適な食材セットやレシピを提案します。
注文した食材はすぐに調理できる状態で届き、「無駄なく自分に合った食生活を送りたい」という現代人のタイパ意識にマッチしています。

なぜ支持されるのか

これらの事例に共通するのは「自分のために選ばれた」という特別感です。
AIとデータ解析が可能にするパーソナライズは、SNSでの共有もされやすく、ファン化や継続利用を促進する仕組みとして注目されています。

飲食店におけるパーソナライズの可能性

食品業界だけでなく、飲食店でもパーソナライズの波は現実味を帯びています。
現場で無理なく運用できる形で、テーブル単位・気分単位のカスタマイズが広がっています。

パーソナライズ・テーブルとは?

一部のカフェチェーンでは、QRコードを読み込むとメニューが表示され、辛さやトッピングをスライダーで自由に調整できます。
同じ料理でも好みや体調に合わせて調整でき、スタッフの負担を増やさず柔軟な対応が可能です。

気分・シーン別メニュー提案の可能性

ホテルレストランなどでは「仕事前」「仕事後」「週末のリフレッシュ」など時間帯やシーンに合わせ、メニューを切り替えて提案する例が増えています。
「集中したい人向け高タンパクメニュー」など、付加価値の高い提案で差別化できます。

具体的な導入方法と工夫ポイント

タブレットオーダーとAIレコメンドを組み合わせ、来店履歴を活用した「前回のおすすめ」表示などの仕組みも注目されています。
小規模店でもLINEクーポンにパーソナライズ要素を取り入れるなど、身近なデジタルツールで十分実現可能です。

飲食店DXで叶える“あなた専用”の体験作り

パーソナライズを実現するには、DX(デジタル化)の活用が欠かせません。
無理に大規模なシステムを導入しなくても、デジタルオーダーやAIを組み合わせれば、個人最適の提案はすぐに始められます。

AI・デジタルオーダーの活用例

AIがリピーターの履歴をもとにおすすめを提示する仕組みが増えています。
会員アプリやLINEミニアプリとの連携で、顧客一人ひとりに“いつもの注文”を提案できます。

顧客満足度アップにつながるポイント

「自分の好みをわかってくれている」という体験は、他店への流出を防ぐ武器になります。
接客だけでなく、仕組みとして“気遣い”を感じてもらえる点が重要です。

今後の展望と導入のヒント

いきなり全メニューをパーソナライズする必要はありません。まずは味の濃さや量の選択肢など、
小さな工夫から始めて、徐々に拡充していくのがおすすめです。

まとめ ― パーソナライズが店舗経営にもたらす価値

タイパ・コスパに続く“あなた専用”の体験が、外食店の新しい競争力になりつつあります。

来店頻度と顧客単価の向上

パーソナライズが「また来たい」を生み出し、リピーター育成に直結します。
結果的に客単価の向上にもつながり、季節や気分に合わせた再訪も促せます。

店舗運営の差別化ポイント

メニューだけでなく接客や空間にもパーソナライズを活かせば、
他店との差別化が明確になります。

これからの外食DXの鍵

お客様の声をどうデータ化し体験に活かすかが成功の鍵です。
“心の声を引き出せる店”が、これからの外食で選ばれ続ける存在になるでしょう。

タイパ・コスパを超えた「自分に合わせてもらえた」という体験が、これからのお客様を惹きつける大きな力になります。まずはできることから一歩を踏み出してみませんか。
タイパ・コスパを超えた“選ばれるお店”をつくるには、立地や物件の選定も重要なポイントです。

店舗開発ジャパンでは、エリア特性や顧客動向に合わせた物件情報をご紹介しています。
新規出店や物件探しのご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

執筆者プロフィール

山添 崇範

ビズキューブ・コンサルティング(株) 物件開発部 エグゼクティブディレクター

奈良県奈良市出身。関西学院大学経済学部卒業。2000年、ワタミ株式会社に入社し、店長業務、エリアマネージャーを歴任。その後、店舗開発部に異動し、店舗開発業務に従事。本部長として全国47都道府県にて約150店舗の新規出店・店舗展開に携わる。2020年、BCホールディングスグループにて店舗開発等のコンサルティング事業会社「店舗開発ジャパン」代表取締役に就任。店舗開発のプロとして、様々な業種、業態の出店サポート、コンサルティングに従事している。物件・立地を一目見ただけでお店が繁盛するかがわかる、と自負している。
コラム一覧へ戻る

お問い合わせ・資料ダウンロード

計画通りの出店を実現したいとお考えの企業様は、店舗開発ジャパンにお任せください!
まずはお気軽にご相談・お問い合わせください。店舗開発に役立つ資料もご用意しております。

Mail.お問い合わせ

DL.資料ダウンロード

お電話でのお問い合わせ 03-6279-4941 平日 10:00~18:00