【新規出店】内装工事の内装業者の選び方・居抜き物件の注意点

山添 崇範

店舗にとって立地が非常に重要であることは前回までのコラムでご紹介しました。


店舗開業までにやるべきこととして、物件が決まれば次に行うのは内装工事です。

実は内装工事は、物件探しと同じくらい重要です。なぜなら、メニューやサービスマニュアル、販売促進方法などは開店したあとでも状況に応じて変えることができますが、内装工事は物件と同じく開店後気になるところが出てきても簡単に変えることができないからです。また内装投資は店舗ビジネスにとって、もっとも高額な投資になります。そのため内装業者選び、工事についての知識も必要です。

そこで今回は内装工事についてご紹介します。

内装業者の選び方

どこの内装業者に依頼するのかは店舗の内装施工において、もっとも大事な事の一つです。
世の中にはそれこそ星の数ほどの内装業者があります。
一口に内装業者と言ってもそれぞれに特徴があり、価格、品質、デザイン、提案力など、業者によって異なります。

では、内装業者はどのように選べば良いのでしょうか?

インターネットで検索、マッチングサイトなどで紹介を受けるといった形で自分で内装業者を探す方法もあります。ですが、依頼者側に十分な知識、経験がないとネット上での情報や口コミだけでは価格、仕事ぶりが適正かどうかの判断はかなり難しいでしょう。発注後、追加の工事や手直しが発生し、大きく予算をオーバーするといったことはよくある話です。また、手抜き工事もないとは言い切れません。

もっとも安心な方法は、先に店舗をオープンさせている業界の先輩や仲間からの紹介です。仕事ぶりや価格、出店者の意図を汲んだ設計、デザインをしてくれたか、トラブルはなかったかなど、内装工事を発注する際に起こる心配事を事前に解消できるため、実績のある人からの紹介はとても心強いです。
また内装業者にとってもすでに付き合いがあり実績のある人からの紹介ならば、安易に料金を上乗せしたり手を抜いたりということもしないでしょう。そういったことからも信頼できる人からの紹介というのがもっとも良いと考えられます。

しかし、脱サラして商売を始める場合や異業種からの参入などで業界内の人脈がない場合はどうすれば良いでしょうか?
そのような場合は物件を契約した際に、仲介をしてくれた不動産業者に相談するのも一つです。常に店舗の入退去に関わっているため懇意にしている内装業者もいくつか知っているでしょうし、紹介もしてくれるはずです。

相見積りをとろう

では、紹介してもらった内装業者にすべて任せて安心かといえばそうではありません。繰り返しますが内装費用はもっとも高額な投資です。コスト面で後悔なく内装工事を進めるために、複数の内装業者で相見積りを取ることをおすすめします。相見積りをとる際の注意点はいくつかあります。

見積りの項目をそろえる

まずは見積りの項目を揃えることです。内装業者の提出する見積りに統一のフォーマットのようなものはありません。そのため、内装業者によって見積りの項目は異なります。

たとえば内装業者A社は壁紙の張替は不要としていたのに内装業者B社は張替が必要と判断した場合、工事代金の総額は当然変わってくるでしょう。これではどちらの内装業者に依頼すべきなのか正しい判断ができません。
見積りの項目をそろえるためには、まずは内装業者A社に内見に立ち会ってもらったうえで見積りを依頼します。そして、内装業者A社から出て来た見積り書の単価、金額を隠した状態で内装業者B社、内装業者C社に見積りの依頼を行います。そうすることで同じ条件、同じ見方での見積りが出てくるので、正しい金額の比較ができます。

ただし、注意点が一つあります。もし最初に見積りを出した内装業者A社より他社から安い見積りが出てきた場合には、他社の金額をお伝えしたうえで同等の金額でできるかを内装業者A社に相談しましょう。同額の金額での施工が可能なのであれば、最初に依頼した内装業者A社に発注した方が無用なトラブルを避けることができます。

現状を確認してもらい、坪単価のみで判断しない

また内装業者には、実際に物件の現状を内装業者が確認したうえで見積りをもらうことが重要です。現状を見ていない内装業者から、凡その坪単価のみを聞いて判断してしまうことは非常に危険です。なぜなら坪単価いくらというのはあくまでも目安であり、実際の条件によって大きく変わるからです。
たとえば坪単価は物件の大きさによっても大きく変わります。広い物件の方が当然坪単価は安くなりますし、狭い物件の方が高くなります。(物件の大きさに関わらず、必ず必要なものは価格が変わらないから)
見積りをもらう際にはしっかり現場を見てもらい、見積り項目をそろえたうえで正確に比較することが品質を担保するとともにコストを抑える方法です。

居抜き物件の活用法

スケルトン物件と居抜き物件の違い

店舗物件にはスケルトン物件と居抜き物件の二通りがあります。まずはスケルトン物件の特徴を紹介します。

店舗物件の契約では出店時に物件を借りて、内装を施したうえでオープンします。退去するときには賃貸マンションやアパートと異なり、内装などを借りたときの状態に戻すのが通常です。この『何も内装が設置されていない状態』をスケルトンといいます。スケルトン物件は借り手が自由にデザインレイアウトを設計できるのがメリットです。

ただし厨房設備から空調機器、内装造作まですべてゼロから行うわけですから、それ相応の資金が必要です。一方、居抜き物件とは、前に入っていたお店の内装がそのまま残っている状態をいいます。飲食店の場合は冷蔵庫、厨房機器やテーブルなどの什器類が残っている場合も多々あります。
そのため、居抜き物件は現状の機材、レイアウトを活かしながら施工をすることになります。スケルトン物件のように自由にレイアウトを組むことはできなくなりますが、費用が格段に安くなるというメリットがあります。

居抜き物件の貸主・借主側のメリット

それでは契約上は借りたときの状態に戻すのが通常であるのに、なぜ居抜き物件というものが存在するのでしょうか?
それは借主の投資額が抑えられるというメリットをもたらすだけではなく、前の借主にも大きなメリットがあり、場合によっては貸主にもメリットがあるからです。
前述したとおり借主はお店を退去するときには借りた状態(スケルトン)に戻す必要があります。これを原状回復工事といい、それなりの費用がかかります。店の大きさ、場所にもよりますが、数百万円かかるといった事も珍しくありません。
居抜き物件として次の借主に貸すということは、スケルトンに戻す費用がかからないという大きなメリットがあります。場合によっては、造作を次の借主に買い取ってもらうことも可能です。

また貸主にもメリットがあります。初期投資がかかるスケルトンからの出店よりも居抜き物件で出店を希望する出店者も多く、次の借主を見つけることが容易になります。そのため、借主が存在しない空室リスクを抑えることができます。

居抜き物件の注意点

新規開業者、前借主、貸主と三者三様にメリットがある居抜き物件での出店ですが、良いことばかりかといえばそうではありません。
居抜き物件であっても出店においてもっとも大切なことは立地です。どれだけ費用を抑えて出店ができたとしても立地が悪ければ収益を上げ成功することは難しいです。

少しでもコストを抑えられる居抜き物件は開業者にとって魅力的なものです。「内装造作、厨房機器がそのまま使える!すぐに開業できる!」と、飛びつきたくなる気持ちもわからなくはないですが、実は居抜き物件には十分な注意が必要です。なぜなら前の借主が退店したということは退店に至った何かしらの事情があるからです。なぜ退店したのか、その理由をよく確認する必要があります。

前借主の退去が繁盛しすぎて店舗拡大のため移転というような理由でしたら、非常に良い物件です。また、繁盛していたが前借主の高齢化、人手不足によるやむを得ない退店も悪くない話です。
ただ、前借主が売上不振により退店した、というのであれば要注意です。
特に退店した店舗と同業種業態で出店を考えている場合は、そもそもターゲットと立地があっていない可能性も考えられ、不振店となるリスクがあります。また「以前と似たようなお店ができた」と思われ、お客様に与える新店開店のインパクトが小さくなる恐れもあります。
また空調設備、厨房機器といった設備機器の状態もよく確認する必要があります。こちらは内見時に詳しい業者に立ち会ってもらうことが必要でしょう。オープン後すぐに空調が壊れ、入れ替えに結構な費用がかかった。厨房の防水が切れて漏水を引き起こしてしまったなどという事はよくある話です。居抜き物件での出店は厨房設備や内装をそのまま流用出来るためコストダウンにつながりますが、そういったことを踏まえ、より慎重に検討するべきです。

まとめ

内装工事について、内装業者の選び方や居抜き物件の選び方・注意点がわかりましたでしょうか。
店舗を作るうえで内装工事は非常に重要ですがコストがかかるため、開業される方にとっては悩ましい要素でもあります。また「こういった内装で開業したいが、そもそもお店の立地は大丈夫だろうか?」とお悩みの方もいらっしゃると思います。
もっとも大切なのはターゲットとマッチした立地選びです。そういった店舗開発業務にお悩みの方はお気軽に店舗開発ジャパンにご相談ください。不振店になるリスクを抑え、繁盛店をつくるお手伝いをいたします。

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執筆者プロフィール

山添 崇範

店舗開発ジャパン 代表取締役社長

奈良県奈良市出身。関西学院大学経済学部卒業。2000年、ワタミ株式会社に入社し、店長業務、エリアマネージャーを歴任。その後、店舗開発部に異動し、店舗開発業務に従事。本部長として全国47都道府県にて約150店舗の新規出店・店舗展開に携わる。2020年、BCホールディングスグループにて店舗開発等のコンサルティング事業会社「店舗開発ジャパン」代表取締役に就任。店舗開発のプロとして、様々な業種、業態の出店サポート、コンサルティングに従事している。物件・立地を一目見ただけでお店が繁盛するかがわかる、と自負している。
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