「出店せよ」の現場で起きていること─店舗開発を救う「分業」という戦略

山添 崇範

出店指令の裏側で、現場が悲鳴を上げている

コロナ禍を乗り越え、再び成長軌道に乗り始めた飲食業界。
多くの企業が掲げる戦略は、「競合より先に立地を押さえ、ブランドを広げる」という“出店加速”です。

しかし現場では、その「出店せよ」という号令が重くのしかかっています。
人手不足の中、店舗開発担当者は出店計画だけでなく、既存店舗の契約更新や貸主対応、修繕手配、設備トラブル対応までを一手に引き受けています。

結果として──本来集中すべき「出店の質とスピード」が犠牲になっているのです。

本来のミッションに集中できない現実

店舗開発担当者の本来の役割は、立地選定・商圏分析・収益予測など、出店を成功させるための意思決定業務にあります。ところが、日常的な雑務に追われ、集中力を維持することすら難しい。

物件精査や分析が後回しになり、結果的に出店スピードも品質も落ちてしまう──。
「やるべきこと」と「できていること」の乖離が、現場を静かに蝕んでいます。

人を増やせば解決する? 現実はそう甘くない

採用の壁:人が集まらない

経営陣は「人を増やせばいい」と考えがちですが、実際には応募が集まりません。
店舗開発は専門性が高く、経験者は限られています。
ようやく採用できても、すぐに即戦力とはならず、現場の負担はむしろ増える場合もあります。

育成の壁:時間と余裕がない

新人を育てるには、“フォローできる人員”と“教育のための余白”が不可欠です。
しかし現場にその余裕はなく、育成は理想論に終わりがち。
せっかく育てても数年で辞めてしまうリスクもあり、投資が報われないケースも少なくありません。

属人化の壁:ノウハウが個人に偏る

さらに深刻なのが、物件交渉や契約更新といった業務の“属人化”です。
特定の担当者に情報が集中し、退職や異動で一気にノウハウが失われる。
その結果、引き継ぎの遅れや判断ミスが発生し、組織全体のスピードを鈍らせています。

つまり、「人に依存する構造」こそが出店のボトルネックなのです。

出店力を取り戻すカギは「分業」にある

すべてを抱え込まない勇気

店舗開発担当者が本当に集中すべきは、出店の質とスピードを高める業務。
それ以外の契約更新や貸主対応、修繕対応などは「出店に直結しない業務」です。

にもかかわらず、それらをすべて担当者が抱え込んでいる現状が問題です。
リソースが分散し、本来のミッションを果たせなくなっています。

アウトソースという合理的選択

ここで有効なのが「分業」、つまり管理業務のアウトソースです。
手間のかかる業務を専門業者に任せることで、担当者は本来の業務に集中できます。

たとえば──

  • 契約更新や貸主との交渉
  • 修繕履歴やトラブル対応の管理
  • 契約書類の整理や更新

これらを外部パートナーが担えば、現場の負担は大幅に軽減されます。

分業がもたらす出店加速のメカニズム

「人を増やす」よりも「集中力を増やす」

出店数を増やすために最も重要なのは、人員拡充ではなく環境整備です。
つまり、今いる人材が“出店そのもの”に集中できる状態をつくること。

出店数 = 人 × 集中力 × スピード

分業によってこの「集中力」と「スピード」を取り戻せば、少人数でも出店力は劇的に向上します。

実際に起きた変化

ある飲食チェーンでは、物件管理を外部委託したことで管理部門の3名を開発チームに異動。
採用を増やさずに出店対応力を強化しました。

結果、年間出店数は前年比120%に増加。
さらに契約更新交渉では一時金2,400万円を削減し、年間6,000万円のコスト増を未然に防止。
分業は「コスト削減」ではなく「成長の投資」であることが証明されました。

「構造」で戦う時代へ──出店力の再定義

出店競争に勝つために必要なこと

出店は競争であり、時間との勝負です。
好立地を素早く見極め、分析し、判断するスピードが成功を決めます。

しかし現場が契約書チェックや修繕対応に追われていては、勝負に勝てません。
出店担当者が「出店」に集中できる構造を持つかどうかが、企業の競争力を分ける時代になっています。

「頑張り」ではなく「仕組み」で戦う

かつては、現場の努力と根性が出店を支えてきました。
しかし、今求められているのは構造的に集中を生む仕組みです。

アウトソーシングは、単なる効率化でもコスト削減策でもありません。
それは、出店戦略を実行するための「経営インフラ」なのです。

「人」ではなく「仕組み」で強くなる組織へ

これからの店舗開発は、個人の頑張りに依存する時代から、仕組みで支える時代へとシフトしています。

分業によって、限られた人材を最大限に活かし、出店力を底上げする。
それこそが、持続的な成長を実現するための企業の新しい選択肢です。
そして、その一歩を支えるのが、私たちビズキューブの物件管理サービスです。

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執筆者プロフィール

山添 崇範

ビズキューブ・コンサルティング(株) 物件開発部 エグゼクティブディレクター

奈良県奈良市出身。関西学院大学経済学部卒業。2000年、ワタミ株式会社に入社し、店長業務、エリアマネージャーを歴任。その後、店舗開発部に異動し、店舗開発業務に従事。本部長として全国47都道府県にて約150店舗の新規出店・店舗展開に携わる。2020年、BCホールディングスグループにて店舗開発等のコンサルティング事業会社「店舗開発ジャパン」代表取締役に就任。現在は、ビズキューブ・コンサルティング㈱ 物件開発部の最高責任者となり、店舗開発のプロとして、様々な業種、業態の出店サポート、コンサルティングに従事している。物件・立地を一目見ただけでお店が繁盛するかがわかる、と自負している。
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